日本円と連動することを目指しているステーブルコイン「JPYC」。
そもそもステーブルコインとは、米ドルや日本円など、特定の資産と価値を連動させることを目指した仕組みです。
2026年9月17日、JPYCが韓国の暗号資産取引所「Upbit(アップビット)」に上場しました。
ところが、上場直後にJPYCの価格が大きく上昇。
本来1JPYC=1円を目指しているにもかかわらず、一時4.2円付近まで値上がりしました。
「1円のはずなのに、なぜ4円以上になったの?」
今回は、この「1円から大きく離れた価格になった理由」を初心者向けに解説します。
なお、JPYCの基本的な仕組みや実際の使い勝手については、以前の記事で詳しく解説しています。
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1.JPYCが一時4.2円になった
2026年9月17日、JPYCが韓国のUpbitに上場しました。
取引開始後、JPYCは本来の1円を大きく上回り、一時4.2円付近まで上昇しました。
つまり、1円のJPYCを4円以上で買う人が現れたということです。
「ステーブルコインなのに、なぜこんな価格になるの?」
そう思う人も多いでしょう。
ここで重要なのは、JPYCそのものの価値が突然4倍になったわけではないということです。
今回の価格上昇には、上場直後に買い注文が集中したことに加え、JPYCの供給や流動性の少なさが関係しています。
2.大きかったのが「市場規模の小ささ」
今回の出来事を理解するために、JPYCの規模を見てみましょう。
「JPYC EX」は2025年10月にサービスを開始し、2026年9月18日には累計発行額が100億円を突破しました。
100億円と聞くと、大きな金額に感じます。
しかし、ここで注意したいのが、累計発行額と、実際に市場へ流通している金額は同じではないということです。
9月21日時点の調査では、発行体の管理アドレス以外に存在するJPYCの流通額は約42.9億円でした。
つまり、累計発行額が100億円を超えていても、実際に市場に流通しているJPYCの規模は、それよりかなり小さいということです。
世界で広く使われているステーブルコインと比べると、JPYCの市場規模はまだ小さいことが分かります。
3.USDTやUSDCと比べると規模の差が分かる
ここで、世界で広く使われているステーブルコインと比較してみます。
代表的なのが、USDTとUSDCです。
2026年9月時点で、USDTの時価総額は約1,833億ドル、日本円で約27兆円。
USDCは約737億ドル、約10.8兆円の規模です。
一方、JPYCの9月21日時点の流通額は約42.9億円です。
※JPYCは「流通額」、USDT・USDCは「時価総額」であり、同じ指標ではありません。
それでも、現在市場に存在する規模を比べると、JPYCとUSDT・USDCには非常に大きな差があることが分かります。
今回のUpbit上場では、この「市場の小ささ」が価格の動きに大きく影響しました。
4.なぜJPYCは4.2円まで上がったのか?
では、なぜ1円のはずのJPYCが、最大4.2倍まで上昇したのでしょうか。
結論からいうと、Upbitへの上場で買い注文が一気に増えた一方、新しいJPYCを発行して市場へ供給する動きがなかったことが大きな原因です。
このように、目指している価格から大きく離れることは、ステーブルコインにとって重要な問題です。
ステーブルコインが目標とする価格に連動することを「ペグ」と呼びます。
過去には「テラ・ルナ」で大きな問題に
ステーブルコインの価格が目標値から大きく離れた事例は、過去にもあります。
2022年には、米ドルとの連動を目指していたステーブルコイン「TerraUSD(UST)」の価格が1ドルを大きく下回りました。
その背景には、TerraUSDの価格を支える仕組みがうまく機能しなくなり、売りが集中したことなどがありました。
価格の下落が止まらなくなると、関連する暗号資産「LUNA」も急落。
最終的には、TerraUSDは1ドルとの連動を維持できなくなり、LUNAも大幅に価値を失いました。
このように、ステーブルコインにとって、目標とする価格との連動を維持できるかどうかは非常に重要です。
今回のJPYCは、TerraUSDとは仕組みも価格の動きも異なります。
JPYCは1円を大きく上回る方向に動きましたが、TerraUSDは1ドルを大きく下回りました。
では、今回のJPYCでは、具体的に何が起きたのでしょうか。
まず、何が起きたのか

2026年9月17日、韓国の暗号資産取引所「Upbit(アップビット)」でJPYCの取引が始まりました。
取引開始直後から買い注文が集中し、JPYCは本来の1円から大きく離れ、最大4.2倍まで上昇しました。
ドル円に置き換えると、一時「1ドル=49円」相当まで価格が動いたことになります。
しかし、ここで不思議なのが、「1円で発行できるなら、発行元がJPYCを追加で発行して、4円で取引されている市場に供給すれば、価格は戻るのでは?」ということです。
このように、価格差を利用して利益を得ようとする取引を「アービトラージ(裁定取引)」と呼びます。
本来なら、
発行元がJPYCを新たに発行する
↓
発行されたJPYCが市場に供給される
↓
売り注文が増える
↓
価格が1円に近づく
という流れになります。
ところが今回は、この「発行元が新しいJPYCを発行して市場へ供給する」という部分が、すぐには機能しませんでした。
新規発行が62日間ゼロだった
オンチェーン調査によると、JPYCの新規発行は2026年7月17日を最後に、9月17日まで62日間確認されていませんでした。
62日間も新規発行が確認されていなかったというのは、かなり異例の状態です。
さらに、上場当日のイーサリアムチェーン上では、発行体が保有していたJPYCの在庫が2,082枚まで減少。
これも異例の状態で、金額にすると2,082円分。ほぼ在庫がない状態でした。
つまり、JPYCの価格が大きく上昇しても、発行元が新しいJPYCを発行して、高くなった市場へ供給する動きがすぐにはできない状態だったわけです。
さらに発行予約も一時停止
この日の20時34分には、JPYC公式がイーサリアムチェーン上のJPYC発行予約を一時停止すると発表しました。
さらに22時19分には、ポリゴンチェーンでも発行予約を一時停止しています。
公式発表では、いずれも理由は「原因調査中」とされていました。
ここは注意が必要です。
発行停止の原因が、価格急騰や在庫不足だったと公式が説明したわけではありません。
ただし、価格が大きく動いた時間帯に発行予約の停止が重なり、新しいJPYCを市場へ供給しにくい状態になっていたことは、オンチェーンデータと公式発表から確認できます。
その後、供給が戻ると価格差が縮小
そして同じ日の21時37分と21時39分、62日ぶりとなる新規発行が行われました。
イーサリアムチェーンで5.9億JPYC、ポリゴンチェーンで13.9億JPYC。
合計19.8億JPYC、19.8億円分がわずか1分7秒の間に発行されています。
その後、価格差は急速に縮小しました。
UpbitでのJPYC価格は、4.23円 → 1.32円まで低下。
ドル円換算でも、1ドル=49円 → 122円まで戻りました。
つまり今回の価格急騰は、「JPYCの価値そのものが4倍になった」のではありません。
買いたい人が一気に増えた
↓
新しいJPYCの供給が追いつかなかった
↓
売りに回せるJPYCが不足した
↓
価格が1円から大きく乖離した
↓
新規発行によって供給が戻る
↓
価格差が縮小した
という流れです。
今回の出来事は、ステーブルコインであっても、市場の需給や流動性だけでなく、発行元側の発行・供給体制によって、実際の取引価格が大きく動くことがあると示しました。
まとめ
今回は、1円を目指すJPYCが、一時4.2円付近まで上昇した理由を見てきました。
上場直後に買い注文が集中する一方、新規発行や供給がすぐに増えなかったことで、価格が大きく乖離しました。
特に、62日間も新規発行が確認されていなかったことや、発行体の保有残高が2,082JPYCまで減少していたことは、今回の価格急騰を考えるうえで重要なポイントです。
私は以前からJPYCに期待していた一方で、実際に普及するのかについては疑問も持っていました。
今回の発行・供給をめぐるトラブルを見て、JPYCに対する世間からの印象も、さらに悪くなってしまったのではないかと感じています。
私自身も、今後JPYCを利用することはないと思います。
最近は、日本でもステーブルコインに関するニュースを目にする機会が増えてきました。
これから本格的に普及していくためには、安全性だけでなく、誰でも安心して使える分かりやすさや使いやすさが重要になるのではないでしょうか。
実際、最近ではUSDCで決済できるサービスも増えています。
日本でステーブルコインが一般的な決済手段として普及するには、まだ時間がかかるのではないか。
今回のJPYCの騒動を見て、私はそう感じました。
参考記事
一チェーンホールディングス「JPYCが1ドル49円に|公式が一時発行停止・アービトラージは儲かるのか」
【免責事項】
本記事は、JPYCやステーブルコインに関する情報を初心者向けに解説することを目的としています。
掲載している情報は記事作成時点のものであり、正確性や将来の結果を保証するものではありません。
暗号資産への投資・利用については、ご自身で情報を確認し、判断してください。
本記事の情報を利用したことによって生じた損失について、当ブログでは責任を負いかねます。


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